「はぁぁあ!?
『桜宮 対 三和工業』って…」
沙羅が急に声をあげた
マジで!?もろうちの高校じゃん!!
なんか複雑……
あたしたちが向かったのは一塁側のスタンド
工業側のスタンド
春の大会は全校応援なんかないからお客さんはほとんどいない
まだ地区予選だし
「先攻なんだ……」
工業が先攻だからうちの高校の野球部が守備につく
今日もマウンドにはエースナンバーを背負った村瀬が登った
なんかあたしへんに意識しちゃってる
みんながあんなこと言うから!!!
「ってかさ、村瀬ってどのくらいすごいの??」
どのくらいって……
「さぁ??そこそこストレートも速いし変化球も多彩でスライダーのキレも最高って前に北川が言ってたような……」
たぶん高校生の中ではレベル高いほう
あたしもあんなの打てる気しないよ
マウンドでは村瀬が北川のミットをめがけて投球練習をしていた
「……よくわかんないけど村瀬ってすごいんだね」
試合開始のサイレンが鳴って工業の一番バッターが左打席に入った
あたしってどっち応援すればいいのかな??
────────────カキーン
球場に鋭い音が響いた
工業の一番バッターがセンター前にボールを運んだ
「なんだ(笑)村瀬そんなでもないじゃん」
ほんとはもっとすごいはずなんだけど
確かに今日はストレートもそんな走ってないし、変化球のキレもいまいち
まだ3球しかみてないけどスライダーが浮いたところをセンター前に運ばれた
「今日は調子悪いのかもね…」
村瀬をつぶすなら今日かもね(笑)

