「…いいよ、話す。」
きっと、この時、頑丈に締められた鎖がどこか緩んでしまったんだろう。
あたしは、不意にそう言って顔を上げた。
深雪の真直ぐに突き刺さる視線があたしの覚悟を鈍らせる。
色褪せた過去をくっきりと映し出す、あたしの脳裏。
「あたしが、族に入ってたのは……父親のDVのせいで、母親は離婚してていなかったけど、妹守らなきゃだったから強くなろうと思って。今はあたしと妹で住んでるから大丈夫だけど。」
ぽかんと聞き入る深雪にあたしは、深いため息を吹きかけた。
透き通る青空の下に似合わない暗い重い話が酌み交わされる。
「お父さんは……?」


