涙の温度




そんな優しい言葉をかけたってあたしには何の効果もないのに。


心のどこか奥では、いいように使ったら捨てるんでしょ?って考えてるような女なのに。



「ほんでさぁ〜、聡がそこでバイクに乗ってきてさ〜そらもう、ベストタイミングだったわけ!」



楽しそうに自分の武勇伝を語りながらいつも通りに笑ってる。


あたしも、いつも通りに無表情で冷めた目をしながら話を聞く。



別につまらないわけぢゃない、でも、これがあたしの顔だから。


笑顔なんて…、涙なんて。


何年も前に捨てた……



「んで!こんな風にぶぅんって…って、聞いてる?」


「へ?」



鳩が豆鉄砲を食らったような、不思議な顔をすると深雪は、ムスッと口を歪ませてへの字を作った。