「あれっ?
桜空ちゃんじゃない?」

3人で談笑しながらケーキを頬張っていたら、後ろから声をかけられて、
振り向いた先には、スーツ姿の圭吾先生と、 圭吾先生によく似た紳士がもう1人。

「よお、院長。今日は、息子と外出か?」

「博、今日は孫連れて入り浸りか?」

「孫じゃなくて、ワシのガールフレンドと、その彼氏。」

遠藤さん?
私たち、付き合ってないし。
それに…

えっ? えっ??
院長先生と息子さんって……

『圭吾先生、御曹司だったの?』


「はっ、 今ごろ?
桜空ちゃん、どんだけ俺に興味ないわけ。

ん? 君は……」


私の隣にいる翔君に視線をうつした圭吾先生。


「整形外科に入院してる、久野翔です。」

「あー、ちっちゃな彼氏だ。
オレの事、覚えてない?

まぁ、仕方ないよな あの頃は、小児病棟のインターンだったからさ、俺。」


そう言いながら、隣のテーブルをくっつけて、私の隣に座る圭吾先生。

若いもんの邪魔はせんよ…って、
院長先生と遠藤さんは少し離れた席へ着席された。



当時の話を聞かされた私たちは、2人してゆでダコ状態だったのは言うまでもなく……

だけど、圭吾先生のおかげで翔くんと私の点と線がより濃く繋がったのも確かで。





「こりゃあ、おちおちしてらんないよな圭吾も。」


「圭吾?
あー、確かに今のあいつがあるのは彼女のおかげだが、親としては複雑なんだぞ。」


そんな会話が大人たちの間でされていたなんてつゆ知らずで……


私が恋の悩みを抱えるのは、
もう少し先になりそうです。