「……ミ、ク…?」

「そうだけど、どうかした?」


ニコッと笑みを浮かべるが、男の表情は固まったままだ。女は背中に手を隠し、如何にも男の様子が不思議だと首を傾げる。

男が驚いていたのは、彼女の格好。昼間とは違い、闇に紛れるような黒いワンピースを着用している。それだけでなく、髪の飾りとしてつけているシュシュも靴も、真っ黒だからだ。


「………お前って、黒い服…、てか黒い物自体つけたりするっけ?」


暗闇で顔が見えなくとも、相手が怪訝しそうな表情を浮かべていることくらい、口調で判断出来る。

女はクスリと笑み、その質問には答えない。


「…ねぇ、知ってる?」


一歩、また一歩と彼に近付く。その度に彼女の縛られた黒髪がザワザワと不吉に揺れ動いた。