男が此処に来たのは、ミクに呼ばれたからだ。

今現在の時刻は二十四時過ぎ。流石にこんな時間、しかも公園に待ち合わせするのはどうかと思ったのだが、ミクはどうしてもこの公園がいいと言い張ったのだ。

ならば危ないから彼女の家まで向かいに行くと言ったら、それも断られた。


「……なんか、いつものミクらしくなかったよな」


頑固というか、融通がきかないというか。いつもの彼女なら、素直に男が危ないからと言えば彼の意見を優先させる。男は何かあったのだろうか、と眉根を寄せた。


その時。


「おまたせ」


涼やかな声が、辺りに木霊した。その人物が男に姿を晒した瞬間、公園内に立派に根を張る木々たちが彼に何かを知らせるかのようにザワザワと震える。しかし男は木々が揺れる様を、
気味が悪いと感じた。


「ミ…、────え?」


振り返ると、街灯の光に照らされる女の姿。男は、目玉が飛び出ると思うほどに目を大きく見開かせる。