「ミクはさ、いつも俺をちゃんと理解してくれてるだろ?」


彼女の髪に絡めていた指の動きを止める。男の表情はいつになく真剣だ。それにミクは顔を強張らせる。


「…………だから」


ミクはその後の彼の言葉が容易に想像出来てしまい、小さく首を振った。


(やめて)


「俺…」


(言わないで)


パクパクと口を動かし、固まった表情から一転、今にも泣きそうな顔をする彼女。その瞳は懇願するかのように揺れている。


──────しかし、男がミクの様子に気付くことはなく、彼女の願いは悲鳴を上げて砕け散った。


「お前のこと、ミクが俺を想ってくれてる以上に、理解してやるからな」


そう言って、男は優しい手付きで女の頭を撫でる。彼は眩しいほどに笑顔で、無邪気だった。