そうして数分後。男と女は息を整える。この公園内に人がいないとはいえども、通行人はいる。男の方は知らないが、少なくとも彼女は誰かにジロジロと見られるのは気分がよろしくない。それにいちゃつきすぎるのもどうかと思い、ふたりはまた座り直した。


「……いつもは俺からするのに、今日は珍しいね」

「偶には、ね」


今日は貴方が不安そうだったから、と目を和らげ、男の頬をさらりと撫でる。彼は気持ちいいのか、目を細めた。


「手、冷たいな」


自身に触れる白い手の上に自分の一回り大きな手を重ねる。


「……貴方は、温かいわ」


(違う)


女は心の内で素早く否定した。


(私が冷たいんじゃない。………貴方が、温かすぎるの)


その瞳は暗く、一切の光を遮断するかのように灯していない。だが彼女は、彼の温かさが羨ましくて、思わず泣きそうになっていた。