「…何が?」
閉じていた目を開け、彼女に先を促せば、嗚咽を漏らしながらも懸命に言葉を紡ぐ。
『……どう、してっ…、いつ、も、わた、しっの…、大切な、ヒト……た、ちを、奪う、のっ……!』
ミクは喋るだけで精一杯のようだ。彼女の涙は表面にあらわれるが、ミノが喉や息が詰まったりすることはない。
ミノはミクが何を考えているのか、何を思っているのかは彼女にとって全て筒抜けである。
身体だって、ミクが涙を流せば勝手に出てくる。だが、今はミノが身体の主導権を握っているのだ。だからミクが手や足を動かしたところで、表面に出ている身体はそれに反応しない。
身体の主導権がミノにあるのにも関わらず、勝手に涙が溢れるのは、恐らくそれが生理的現象だからであろうとミノたちは考えている。
ミノはきりがなく零れ続ける涙を拭い、フッと笑う。
「どうして、だって?」
笑みを浮かべているものの、どことなくミノは苦しそうだ。


