「アタシは誰かのために泣くお前を感じるのは不快だ。だがな」


次の瞬間、不愉快そうな顔が消え、ミノは子どものように無邪気に笑った。 


「アタシのせいで泣くお前を感じるのは悪くない」


その笑顔は、ミノにしては珍しい、邪が含まれていない笑みだった。


「……なぁミク。アタシが憎いか?」


彼女がそう問いかけても、ミクは答えない。


「ミク。お前は可哀想な子。アタシのせいで親に捨てられ、アタシのせいでお前の友人や恋人が死ぬ」


ミノは流れる涙をそのままに、目を瞑る。風
が吹き、彼女の髪を揺らす。


「なぁミク、アタシが憎い?」


静寂しきった辺りに、ミノ特有の少し低めの声が静かに落とされた。


『………っ、ど、し…てっ』


ミクはその問いに答えず、ただどうして、とか細い声で呟く。一層温かくて優しい水が溢れた。