女は驚いたように目を丸くする。そして何が可笑しいのか、クククッと愉しそうな笑みを漏らした。


「ハハハッ! まさか気付く奴がいるなんてなっ!」


ミクが使わないような言葉遣いをする彼女。彼は息が乱れ、胸が張り裂けそうなのにも関わらず、今にも倒れそうなのを必死に耐える。


「いいよ。お前には特別に教えてやる。────アタシはミノ。ミクの、もうひとつの人格だ」

「…ミ、ノッ……クッ!」


男は女──ミノの名を口にすると、糸が切れたかのようにバタリとうつ伏せに地面に伏した。

彼の息は段々と弱くなり、やがて────息をしなくなった。目を瞑っているが、その表情は決して安らかではない。男の周りには、既に死んでいるのにも関わらず、血の海が溢れ続ける。

ミノはその様子に満足げに微笑み、血に染まるナイフをゴミ箱に捨てる。

手袋はワンピースのポケットにクシャクシャに丸めて突っ込んだ。