彼女の右手には、果物ナイフ。女は両手にゴム製の白い手袋をしている為、ナイフの柄部分に指紋は付着していない。 刃の部分には、赤黒い男の血液が今も尚濡らし、それがポタリポタリと地面に落ちている。 「……ほぅら、綺麗になった」 女は唇を歪め、笑う。生暖かい風が、とても不快だった。 「…っ、ぐっ、ああっ! …な、おま、え」 「……何?」 温かさの欠片もない声と同様、男を見る瞳も凍えてしまいそうなほど冷たい。 「…っ、だ、れ…だっ…ハッ!」