『須藤もな』と言った先生。



「あは、あたしはついでなんですね」


「いや、そんなことはない。俺にとって須藤は、かなり手をやいたというか、手を掛けたというか……」


「かなり手を焼かせたのは認めます」



絶対に無理だろうと言われていた高校に、無理矢理受験させてくれとお願いして……


反対する先生を押しきってまで、受験したんだから。


なかなかこんな生徒はいないんだろうな。



「あはは、まあそういう意味では一番印象に残った生徒だな」


「はい、すみません」



ほんとに先生には、頭が上がらないな。


でも、こんなによくしてくれる石川先生に出会えて、ほんとによかった。



「絢華、そろそろ行くぞ?」


「うん」








学校を出て、そのまま優太のアパートへ行った。



「改めて……、絢華、合格おめでとう」


「ありがとう、ほんとは自信なかったんだ。自己採点でもいい点じゃなかったから」


「そんなこと一言も言わなかったじゃん」


「言えなかったんだもん」



自分で頑張って勉強したのもあるけれど、たくさんの人に頼って、受験に挑んだのに……


手応えがなかっただとか、出来が良くなかっただとか、自己採点も散々だったとか……


言えるわけがなかった。



「そっか」



そう言って、優太は横に座っているあたしの肩に腕を回して、ぎゅっと抱き寄せた。



「これからの一年間は、一緒に通えるな」


「うん、ずっと憧れてた、……一緒に登下校するの」


「俺も……。なあ、絢華」


「ん?」


「ずっと俺の傍にいろよ」


「うん、優太も、ずっとあたしの傍にいてね」



そう言って、キスをかわした。