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「ねぇ、わざとしたの?」


「何を?」



明日は土曜だし、優太がうちに泊まりに来たから、ちょっと気になることを聞いてみた。



「卒業式の時のキス」


「あーあれな。なんで今更、んなこと聞くんだよ?」


「今日、そう言われたの。わかってないのはあたしだけだって」


「あはは、確かに絢華だけかもな。つか、誰に言われたんだよ?」



優太も、わかっていないのはあたしだけだって思っていたんだ。



「坂井くんと紗羽。あっ、紗羽とはまた同じクラスになったんだよ!」


「へぇー、良かったじゃん」



そう言いながら、優太の大きな手で髪の毛をくしゃくしゃと撫でてくれる。


その行動に、胸がどきんっと高鳴る。



「つか、坂井って、……和也?」


「うん」


「絢華のこと好きなんじゃなかったっけ?」



優太は、首をかしげながら眉間に皺を寄せる。



「それは中学の時でしょ?今は、昨年の夏から久美と付き合ってるよ」


「そっか」



そう言った優太の表情は、ほっとしたように感じる。



「ていうか、かなり脱線した!何でわざとしたの?」


「あんだけ見せ付けとけば、誰も手ぇ出せねぇだろ?」


「……」