「そういや、優太先輩って就職したんだよな?スーツとか着てんの?」


「うん。凄くカッコイイよ」



毎日スーツで通勤してて、帰りにうちへ寄ってくれた時は、いつも見惚れちゃうんだ。



「早速、惚気?」


「えっ!?」


「つーか、優太さんは何着てもカッコイイよな」



ん?


今登校してきて、坂井くんの前に座った人が口を開いた。


誰?


あ、同じバスケ部の……


えっと、名前なんだっけ……


同じバスケ部で一年間一緒にやってきてるのに、思い出せなかったら失礼だよね。


誰か、名前を呼んで……



「あれ、誠じゃん。またおまえと同じクラスかよ」



って、坂井くんは言うけれど……


マコト?


名字は何?


わかんない。


“坂井”の前だから……


あーっ、ほんとにわかんないっ。


紗羽の肩をトントンと叩いて耳打ちする。



「紗羽の隣の人の名前って何?」


「えっ!?同じバスケ部なんじゃないの?」


「あたし、名前覚えるの苦手なの」


「ふふ、絢華らしいね、佐伯くんだよ」



あっそうだ!



「ありがと、紗羽」



あたしは名前を覚えることがほんとに苦手で、バイト先でもかなり苦労した。


たぶん……


いまだに男バスで、名前のわからない子がいるんだろうな。