「おまえ、……バラすなよ」



優太はそう言って、苦笑する。


でも、そうなんだ……


あたしのために……


なんか、凄く嬉しい。


優太の隣に座って、



「あたしあと10分くらい休憩時間なんだ。その間、ここにいてもいい?」


「ん、もちろん」



そう言いながら、やさしく微笑んでくれた優太に、また胸がきゅんとなる。



でも……


優太と過ごす時間はあっという間で、10分が1分くらいに感じてしまった。



「戻るね」


「ん、頑張れよ。帰りは迎えに来るから」


「うん!」



更衣室でカーディガンを脱いでホールへ戻る途中……



「ちょっと絢華ちゃん!」



後ろから、一つ上のリナさんに興奮気味に声をかけられた。



「何ですか?」


「何、あのイケメン彼氏は!?」



声高々にそう言ったリナさんに、思わず吹き出してしまう。



「あはは、イケメン彼氏ですか?」


「超イケメンじゃん」


「だからあたしいつも、“彼氏はカッコイイですよ”って自慢してたじゃないですか?」


「そうだけど……そんなの、ただの“惚気”だと思うじゃない?」


「まあ、惚気ですけどね。あっ、リナさん、…惚れないで下さいね」


「惚れないけど、惚れそうな容姿だよね」



周りからそんなふうに言われている人が自分の彼氏だなんて、今でも信じられないと思う時がある。