「優太、おーっす」


「おー、太一」



後方から、テンション高めの太一さんが声をかけてきた。



「朝から熱いねぇ。須藤ちゃん、おはよー」


「おはようございます」


「そういや優太、おまえ何で昨日何も言わずに途中で帰ったんだよ?」



昨日?


途中で帰ったんだ。



「急用だよ」


「ほんとかねぇ」



からかうように言った太一さん。



「何だよ、その意味深な言い方は」



太一さんも優太ほどじゃないけれど、背が高いし、あたしの上で、二人で会話しているのを聞いていると、あたしの存在を忘れてるんじゃないかって思えてしまう。


と思っていたら……



「須藤ちゃんが消えるようにいなくなったから、おまえ、焦って帰ったんじゃねぇの?」



なんて言葉が耳に入ってきて……


思わず、優太を見上げた。


そしたら優太は苦笑いしながら、



「おまえ、バラすなよ」



と、言った。


あの時はただ“目を付けられたくない”って思いだけで、逃げるように帰ってしまった。



「絢華、俺さ、……おまえのことになると、周りが見えなくなんだよ。だから、黙っていなくなるなよ?」



昨日は“俺に声掛けてから帰れよ”って言っただけで、そんなことは一言も言わなかったのに……