前を向くことができずに、ずっと唇を噛み締めて、下を向いて歩いた。


ふと優太が足を止めて、あたしの顔を覗き込んできた。



「絢華、何泣きそうな顔してんだよ。……大丈夫だって、俺がいるから」



そう言って、大きな手であたしの頭をポンポンとしてくれた。



「だから、もっと笑えよ。俺は絢華の笑った顔が一番好きなんだからさ」



出かかっていた涙が、こぼれそうになった。


でも、そっか……


あたしには優太がいるんだ。


きっと優太が守ってくれる。


こうやって一緒に登校するの、……ずっと憧れてたじゃん。


一年しかないのに……


楽しまなくてどうするの?


あたし、負けないもん。


繋いでいた手を離して、優太の腕に自分のそれを絡めた。



「絢華?」


「あたしも、……優太はあたしの彼氏だから手を出さないでって、こうやってくっついちゃう」


「絢華、そういうの……やべぇって。……今、すっげぇ抱き締めてぇ、キスもしてぇ」


「さすがにそれはダメだからね」


「はは、そうだな」



そう言う優太を笑みを浮かべながら見上げて、あたしも内心、抱き締められたいなと思っていた。



そして、そのまま視線を集めながら正門まで来た。