「ヤ、ヤダよっ。優太、バスケする時はいつも意地悪だもん」


「絢華がへたくそだからだろ?」


「こればっかりはしょうがないじゃん」



ぷぅーっと頬を膨らませる。


その膨らんだ頬を、優太が笑いながら人差し指で突いて萎ませた。


そんなあたし達のやり取りを見て、坂井くんが呟くように言葉をこぼす。



「ほんとに付き合ってんだな」


「……」


「おまえも絢華に手ぇ出すなよ?」


「“おまえも”って何すか?それに俺、もう振られてますから」


「マジで絢華狙いだったのかよ?」



優太は目を見開きながら、溜め息混じりに言った。


坂井くんもそんなバカ正直に言わずに、適当に流しとけばいいのに。



いつの間にか、降車する駅に着いていて……


電車を降りてからは、優太の一歩後ろを歩く。


どうしてもキョロキョロして、周りをうかがってしまう。



「絢華、おせぇよ」



そう言って、手を繋いできたけれど……



「ちょっ、優太!離してよっ!」



それに遅く歩いていたのは、わざとなのにっ。


一歩後ろを歩いた方がいいって思ったから。



「大丈夫だって」



周りを見ると、やっぱり見られている。


あの人達、昨日もいた。


ブルーのネクタイ……睨んでた人だ。


手を引いて繋いだ手を離そうとするけれど、優太は握る手に力をこめた。


離してよっ……