「絢華、ちゃんと理由を言え」


「……学校には優太に憧れてる子とか、好きな子がいっぱいいる」


「だからなんだよ?」


「あたし、目を付けられたくない」


「は?意味わかんねぇ」



元々優太の眉間に寄っていた皺が、もっと深くなった。



「今朝だって、……いっぱい睨まれた」


「……」


「ほんとは優太といつも一緒にいたいよ?でも……」



涙が出そうになる。



「だから、……“手ぇ離せ”つったのか?」



コクンと頷く。



「……そっか」



優太がぎゅっと抱き締めてくれた。


あたしも優太の背中に腕を回す。



「絢華、……ごめんな」


「え」



何で謝るの?



「気付かなくて」


「優、太?」



我慢していた涙がホロリとこぼれた。


抱き締める力を弱めて離れたかと思ったら、優太の右手があたしの頬を包んだ。


優太は親指であたしの涙を拭いながら、



「絢華、好きだよ」



そう言って、触れるだけのキスをした。



「何かあったら、隠さずに、すぐに俺に言えよ?」



何か……


あるのかな?



この日は優太に抱き締められながら眠った。