『あ…寝ちゃってたか』
「あの…」
『おはよう』
ニッコリと微笑んだ彼の顔はずっと前から
知っている優しさのように思えた。
君は大丈夫…。そう目から伝えられている気がする。
不思議な感情…。
彼が立ち上がったので
「あ…」
と言ってしまった。
『ん?どした?』
「あ…あのあなたの事なんて呼べば…いいですか?」
すると私の唇に指をたて
『敬語厳禁』
ニコッ
と、また笑った。
唇…びっくりした…。
『俺の事はー…佑でいいよ』
「え?呼び捨て…?」
『うん』
「じゃぁ私のことも栞って…」
そう言った直後、佑の顔が少し赤らんだ。
ん…?
『え…し…栞…?』
「そう、栞…」
自分で言いながらふと気がついた。
私は栞だ。
いつか栞と呼ばれた日があったのか
呼ばれたとき思い出した。
自分が栞であると自信を持てた。

