「──神崎先輩!」
ケーキの箱を抱えた先輩が、俺を見上げる。
全身が、心臓になったみたいで、やけに鼓動の音が響いてくる。
震える手を、缶を握りしめることで誤魔化した。
「俺、先輩が好きです!!」
右手のアイスコーヒーを先輩に差し出して、頭を下げる。
1秒、2秒、と過ぎ行く沈黙が怖い。
でも、後悔はしてない!!
ざっ、と砂を蹴る小さな音がするのと同時に、「──あーあ」っていう落胆の呟きが聞こえた。
──撃沈、した。
俺の心が崩れかけた瞬間。
「……先に言われちゃったよ」
頭上からそう声が降り注いで、右手が温もりに包まれた。
驚いて顔をあげれば、先輩が照れ臭そうに笑って「座りなよ」って、俺の手を引く。
そして、俺の手を掴んだまま、先輩は柔らかく笑んだ。


