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「ねぇ、堤くん。この瞬間が俺は幸せだと思うんだよね」
幸せそうな先輩を見られる俺も幸せです!!
「この店のガトーショコラ、っていうか、チョコがそれはもう絶品でね──」
店内で女性客の視線を浴びに浴びまくった俺たちは、逃げるようにしてケーキ屋を後にした。
寮の近くの公園までやってきて、ようやく人心地のつく思いがする。
ベンチに座った俺達は、早速買ったケーキを味わっていた。
先輩が言うように、確かにチョコが美味しい。
幸せを感じる味だ。
でも俺は、チョコの味なんかよりも、嬉しそうにケーキにかじりつく先輩を見ている方が何倍も幸せで。
「堤くん?」
だから、名前を呼ばれるまで先輩をじっと見詰めてしまっていた。
「あ、いえ、先輩のケーキ美味そうだな、って……」
「もしかして食べたかった? 独り占めしちゃってごめんね」
指についたチョコを舐めながら、先輩が申し訳なさそうな顔をする。
「気にしないでください! 俺が食べてるザッハトルテも美味しいですから!!」
「そうでしょ。次は、ガトーショコラも食べてね」
次、ってことは、また先輩と……って、無い無い。
そう何回も先輩が俺のことなんか誘ってくれる……て、え?


