「先輩、ね。そうだよね、俺のが歳上なんだもんね」
「どうかしましたか?」
「何でもないよ。そうだ。実はね、今日は俺の誕生日なんだよ」
「そうなんですか!? おめでとうございます!!」
俺が頭を下げてそう言うと、先輩は照れ臭そうに笑って、ありがとう、と返してくれた。
それよりも、俺には気になることが……。
「そんなめでたい日に俺なんかと出掛けちゃって良いんですか!?」
誕生日なんていう特別な日に誘ってくれるなんて、嬉しすぎてどうかしそうだ。
俺ばっかりこんなに良い思いをして良いんだろうか……。
なんだか、逆に不安になってきたぞ。
「それよりさ、堤くんは、甘いものって好き?」
「え、甘いもの、ですか?」
「そう、スイーツ。俺、甘党なんだよね。誕生日って言ったらケーキでしょ。駅前の店のケーキがどうしても食べたいんだけど、1人じゃ入りにくくて」
「俺もケーキとか好きなんで、その気持ち分かります!」
「あ、ホント? 嬉しいな。堤くん誘った甲斐があったね」
……そうだよ。
もしかしたら先輩も俺のこと…なんて思ったりしたけど、そんな上手く行く筈なんて無いんだ。
期待しちゃイケナイ、って気持ちと同時に、いやいやコレはチャンスだ、って思う気持ちが膨れ上がってきて、俺、おかしくなりそう。
俺よりも少し背の低い先輩を、盗み見するみたいにそっと見遣って、ひっそりと溜め息をつく。
この人を見ていると、無謀だと分かっていてもドキドキしてしまうんだ。
もう、なるようになれ!
当たって砕けろ!
そう……思ってもいいよね!?


