「俺もね、堤くんが好きだよ。だから、君の気持ちも、このコーヒーも、凄く嬉しい。最高の誕生日だね」
俺の目を見て紡がれるその言葉が、夢か妄想か何かなんじゃないかって、思えて仕方ない。
だって、余りにも嬉しすぎる。
これは、夢だ。
きっと俺は、先輩のことを考えすぎて頭が沸いてるんだ。
そうに違いない。
そうじゃなかったら、一体──
「──堤くんを誘って、本当に良かった」
頬を俄に赤く染めて、それでもキラキラした先輩の笑顔が間近に迫って──
「……えっ、今の……って」
「告白は先を越されたから、キスは俺から、ね」
ふんわりと、チョコの香りがした。
「チョコの味だね」
俺が思っていたことと同じ言葉を返されて、これが現実だと気付かされる。
好きな人と交わす初めてのキスは、チョコレート味でした──
──なんて、少女マンガチックな事を思わず考えてしまうくらい、俺の心は舞い上がっていた。
fin


