「おはよう、高槻」


 朝練を終えて教室に入ると、いつも遅刻ギリギリの高槻が机に突っ伏していた。


「今日は早いんだね」


 顔を上げようともしない高槻の肩を揺すると、「やめろ」と低い声が返ってきた。

 どうやら、寝てはいないらしい。

 HRが始まるまであと10分。

 ここは彼を寝かせてあげるのが優しさってヤツかもしれないけど、放っておいたらHR始まっても寝てるだろうな。

 クラス委員の俺としては、見過ごせないよね。


「高槻、起きなよ」


 再び肩を揺すって声を掛けるものの、高槻はうなるような声を出すばかりで起きる気配がない。

 終いには「うるせぇ」とがなった。

 そんな態度を取られると、さすがの俺でも少しは頭に来る。

 こうなったら、何が何でも高槻を起こしてやりたい。

 高槻の前の自分の席に座り、一息吐いてからそっと彼に耳打ちする。


「神宮がお前のこと見てるよ」


 瞬間。

 物凄い勢いで高槻が顔を上げた。

 思い通りの反応に、俺は心の中だけでガッツポーズを決める。


「てめぇ、堤……!」


 少しだけ赤い顔をした高槻が、恨めしげに俺を睨んできた。