結果として、瑞姫の席周辺は、5限が始まる前までに乾かされた。
乱雑に水を拭ったのか、ところどころに水滴は残っていたが、少なくとも授業を受けることに支障はない。
昼休みをきっかけに、瑞姫に向けられる視線は、敵意が強く推されていた。
敢えてその視線には気付かないフリをする。
このような甘い嫌がらせは今日限りかもしれない、と密かに覚悟を決めた。
いじめを耐え切る覚悟ではない。
いじめを“家族”に悟られないように、騙し切る覚悟だ。
きっと透には気付かれる。
そればかりは仕方がない、同じ学校に通っているのだから。
けれど、透はきっと誰にも言わない。
瑞姫がそれを望んでいないのだから。
彼は瑞姫の意思を最優先する。
大好きな、世界で1番大切な“家族”。
余計な心配を掛けるくらいならば、いくらでも嘘をついてやる。
きっと後で怒られるけど、それを覚悟で瑞姫は“家族”を騙すつもりだ。


