「瑞姫、またサボったのか?」
「保健室行ったら帰らされた」
「……保健室?」



“家族”の中で帰宅が最も早いのは、授業が少ない時の那央や、半日授業の日の里沙と香奈を除けば、高校生の2人、瑞姫と透だ。
小6である里沙は、同じクラスの親友に、遊びに連れ回され、中2である香奈は、帰宅時に必ずと言って良いほど道草を食う。

時折、何故みんな帰宅部なのに帰りが遅いのだろうかと首を傾げる透と、家に帰りたくて仕方のない瑞姫は、大抵家に帰り着くのが早い。


つまりは、だ。
今現在、家にいるのは瑞姫と透の二人きり。
誰も2人の気を散らしたり邪魔したりするようなことなどしないし、ましてや声を掛ける者などいない。

よって、透が仁王立ちしている前から逃げる口実は、瑞姫には無かった。