階段を駆け上がって、すぐ左の部屋。 その部屋から、何故か熱気が零れていた。 紛れも無くそこは瑞姫の部屋で、一瞬考え込んだ瑞姫は、ああと呆れ顔をした。 バン、と乱暴に扉を開く。 「ただいま馬鹿兄!」 ベッドに寝転ぶ蜂蜜色の髪の大学生に、思い切り手にした鞄を放り投げた。 結構な勢いがあったはずのそれを、部屋の侵入者は易々と受け止める。 「おかえり、瑞姫」 部屋の侵入者――天宮那央(なお)は、免疫のない女性なら一発で落ちるであろう素晴らしい笑顔を見せた。