静かに怒る透に、香奈は微笑んだ。
猫被るのはなれている。
作り笑いの得意な透より、香奈が素を出す時間は短いのだから、心がどんなに荒れていても、表情にはもう出さない。

「だけど大丈夫だよぅ。お姉ちゃんがいつも通りになるまで、多分そんなに時間いらないと思うしぃ……」
「……何でそう思う?」
「だってお姉ちゃん、私たちのこと大好きでしょぉ?」


だから、絶対大丈夫。
ほんの少しだけ時間を置けば、恐怖を理性が抑えるようになる。

……きっと瑞姫は、幼い頃からそうやって恐怖を忘れてきた。
それは悲しい習慣だけど、今は都合が良い。

香奈の思考は楽観的から来るものではなく、瑞姫への信頼と過ごした時間から来る勘だ。
透より過ごした時間は短いけれど、透より距離を置いて瑞姫を見てきた。

だから絶対、大丈夫。