人との親密な関係に、きっとこの義兄は馴れていない。

有名財閥の一人息子という一見恵まれた環境が、那央を他人と関わりにくくしているのではないか。
現に、透は今も、那央との間に微かな隔たりを感じている。


5年前、透は確かに那央に救われた。
きっと瑞姫も香奈も里沙も同じことを思っている。

でも、瑞姫だけは違う。
誰よりも“家族”を大切にするその姿勢は、何だかんだ言ってあっさりと那央の壁を通過する。
まるで彼女にしか潜れない扉があるかのように。


だから多分、那央は瑞姫を特に心配している。
“家族”の中で最も社交性のない瑞姫。
そうでなくても心配する要素はいくらでもある。



「……学校で、何があった?」



那央は気付いているのだ、透が何かを知っていると。
それでいて話そうとしないのだと。