さ、最低ーーっ!

あたしは勢いよく立ち上がると要に背を向けて走り出した。



「今日は白か。 俺は青い方が好きだけどぉー」



背後からそんな台詞が飛んできた。
あたしはバッとスカートを両手で押さえた。


「ばかああああ!!!」



思いっきり叫んでその場を立ち去る。




マジ最低っ!

要なんて大っきらい!!



もう、前言撤回だあああっ!



誰もいなくなった中庭を走りぬけ、階段も勢いよく駆け上がり教室までの道を全速力で走った。




「はあ、はあ、はあ」



教室の扉を開けると丁度今、授業が始まったところだった。




……セーフ。




「なんだ桜井。遅いぞ。早く席につけ」


数学担当の『ごっちん』こと、後藤先生があたしを睨んだ。
うわ。数学だったんだ。


あたしは頭を下げるとそそくさと自分の席についた。
斜め前の席の早苗が振り返る。


「大丈夫?」


小さな声でさっきはごめん。というふうに両手を合わせてみせた。
あたしは、笑顔で首を横に振った。


そして、今度は後ろを見る。
まるで当然の事のように旬と目が合う。


あの返事をしなくちゃ……。



あたしは前を向き直りながら、要の笑顔を思った。


要……あたしの事だませたと思ってる?

何かを言いかけて、はぐらかしたの知ってるんだから。




ねえ……
ほんとは何を言おうとしたの?