あたしの唇の全てを覆う要の少しかさついた唇。
それはあたたかくて。


からかわれてるってわかってる。


でも……でもあたし……。



「……んッ」



ソファに深く体が沈んでいく。
あたしの体からは力が抜けちゃって、もうなにも考えられなくなっていた。


なんで、要はあたしにキスするのかな?
こんな……

こんなキス……


「……んん」



勘違いしそう。

これは“愛のあるキス”だって。



それくらい要のキスはあたしを痺れさせた。
頭の中が真っ白になる。
 

何度も、何度もその角度を変えてあたしの中の全てを奪ってしまうような、そんなキス。


こんなの知らない。
あたし……どうしちゃったの?



「……未央」



少し掠れた声があたしの耳元をくすぐった。



あ……


それをきっかけに、あたしの頭には一気に血がのぼっていく。

何かを確かめるように深い口付けを繰り返していた要は、あたしにもそれを求めるように熱い舌を差し込んできた。



「……やッ」



我に返る。

そして力任せに、要の胸を押しやった。
油断していたんだろう、さっきまで敵わなかったあたしの力がいとも簡単に要をソファから追い出すことが出きた。


「おわッ!」

「……はぁ…はぁ」


肩で息をするあたしは、少し乱れた自分のスカートをさっと直す。


「いてぇ……」


頭をさすりながら、要は体を起こすとさも恨めしそうにあたしをジロリと睨んだ。