「……」

「……」



あたし達は、お互い黙ってグランドの練習風景を眺めていた。






「……桜井」



あたしは、ゆっくりと旬に視線を戻す。
旬は、グランドを見たまま言った。




「……なんかあった?」


「え?」


「ほら、昨日。……A組の相田が来てから、桜井の様子おかしいからさ」


「……」



そう言った、旬はあたしの表情を伺うように真っ直ぐあたしを見つめた。


まさか、旬の口から要の名前が出てくるなんて思わなくて心臓は急にドクドクと音をたてる。



でも、なるべくそれが悟られないようにあたしは平然を装って答えた。



「ああ。あ、あの人は……ほら、親同士がちょっとした知り合いってだけだし。
あたしとはなにも関係ないよ。……関係、ない。でも、ありがとう。心配してくれて」



関係あるわけない。

昨日のキスだって、きっと要の気まぐれなんだ。
気分でそういう事、出来ちゃうヤツなんだよ。


旬は、それを聞くと「そっか」と視線を逸らして首の辺りをポリポリと掻いた。





でも……


「でも、なんで?……なんで、あたしの事気にしてくれるの?」


「え」



あたしの言葉に、旬は驚いて顔を上げた。




……旬?