たしかに頭の片隅になんとなく浮かぶ顔がある。



あれは……
あれはいつだっけ?



木漏れ日の中。
ふわふわ舞う、淡いピンク。



やわらかい風が揺らすのは、ちょっとだけ癖のある真っ黒な髪。


木々の隙間をぬけて、さしこむ光の筋。

その光のシャワーを浴びて、微笑むのは……
頬をピンクに染めた色素の薄い

まるでお人形のような顔―――……


きれい……






――…あれ?
おかしいな。それ以上思い出せない。
本当に断片的に、何かが見える。
なんだろう、これ。

気持ち悪い。



――相田さんちの女の子が、その子なんだろうか。



でも、女の子がいるなら少しは心強い。

あたしは、来週から相田さんのお宅にパパ達が帰ってくるまでお世話になる事になった。




――――――……
――――……



数日後



あたし達三人を乗せた車は、順調に国道を走っていた。
憂鬱なあたしをよそに、外国好きのパパ達はアメリカへ行ってからの予定を話し合っている。


相田家に向かう車内で、あたしはぼんやりと窓の外を眺めていた。
大きなビルの谷間を抜けて、車はいつの間にか住宅街を進んでいた。


チラリと両親を見る。
相変わらず笑顔で話す二人を見て、あたしは大きく息をついた。



……ったく。
どうなってんのよ、この二人は。


あたしの事なんか全然、苦になっていないようだ。
よっぽど、そのパパの親友は信用されているみたいだ。



この2、3日のうちに、だいたいの荷物は運んであった。
元々、隣り街だったから学校の通学にもさほど変わりはなかった。