「……」



あたしはかれこれ何分こうしてるんだろう?

相田家の玄関の前でドアと睨めっこ。

要はまだ帰ってきてないようで、鍵はしっかりかけられていた。



ど、どうしよう。


なんとなく入りづらいんだよね。



「……はあ」



あたしは意を決して、鍵穴に銀色の鍵を突っ込んだ。



ガチャリ――……


鍵は、あたしの葛藤とは裏腹に簡単にその音をたてた。



「お、おじゃましまぁす」



なんだか、悪い事してるみたいであたしは小さな声でそう言うと、静かにドアを閉めた。



家の中は静まりかえっていた。



いったん部屋に入って制服を脱いでワンピースに着替えた。

しばらく部屋にいたけど、なぜか時計ばかりが気になって気が気じゃない。
勉強……もする気になれないし。

とになくあたしは自分の部屋を出て、リビングに向かった。


誰もいないリビングでつけたテレビからは、季節はずれのドラマが再放送されていて。


それを横目に、あたしはソファに座り、小さく丸まった。

もう帰ってくるかな、アイツ。
どうしよう、この家に2人きりなんて……
耐えられるかなぁ。

学校であんな事言っちゃったんだもん。
怒ってるかもしれない。

なんか、合わせる顔……ないかも。


だって、超有名人の要が、同じ屋根の下で居候してるのがこんなふつーのやつなんだもん。

もっと、キレイな子とかならよかったのに。
みんなに内緒にしたいのは、きっと要の方なのに……。


「……旬はどう思ったかな」


ふと教室での旬の顔が浮かんだ。
まっすぐにあたしを見つめる旬。
……あれは、クラスのみんなと同じ興味の視線だったんだろうけど。


次第に窓の外が暗くなり、なんとなく時計に目をやると、針は静かに6時をさそうとしていた。



パパ達も、いつ帰ってくるかわからない。
おじさん達は出張行ったばっかだし。



あたし、どうなっちゃうんだろ。


たった1人の家で、不安に押しつぶされちゃいそうだ。