「もう会えなくなるなんて、嫌だからな」

「…………」



あたしを抱き寄せる腕にさらに力がこもるのがわかる。
要の大きくて華奢な手は、あたしの髪をかきあげ、さらに自分の方へ引き寄せた。

これ以上くっつけないってくらい。

力は強くて、苦しいのに。
でも嫌じゃない。

心地よい感覚。

甘い香水の香り。




予期せぬ事態と
大好きな要の匂いに包まれて
あたしは今にも倒れてしまいそうだった。




ドキンドキン




この心臓の高鳴りは、あたし?
それとも……要のもの?


要は体をそっと離し、今度は真っ直ぐにあたしの目を見つめた。


頬を両手でしっかりと固定され、もう息がかかりそうな距離に要の顔。



「…………」

「……」




う…わ。

キス……されちゃうのかな?