「未央、そろそろ行こうか」


ギリギリまで待っていてくれたパパも、時計を確認すると溜息をつきながら言った。


「……うん」


エスカレーターの方を見つめながら、あたしは答えた。
手に力が入るのがわかる。


―――どうして?

要……



あたしは、唇をキュッと噛締めてみんなを振り返った。






「みんな……じゃあ、行って来るね」


「元気でね……」

「帰ってきたらまたいっぱい遊ぼうね」

「……未央」



口々に言って、あたし達はまた抱き合った。

愛美……
結衣……


たくさんの笑顔をありがとう……
二人と話してると、嫌な事ぜんぶ忘れられたよ?


早苗……


ずっとずっと一緒だった早苗。
昔からあたしを守ってくれてた早苗……
あたし、早苗が目標だった。
大好きだよ?



旬……


あたしを好きになってくれてありがとう。
旬の優しさにどれだけ甘えてきたかわかんないよ
だけど……
酷いことしてごめんなさい。
あたしは旬が好きだったよ?




出発ロビーを抜けて、チェックインを済ませたあたしは搭乗口でその足を止めた。
そこから動けなくなった。


だって……

ここを渡ってしまったら、もう……





要の姿を見つけることは出来ないから……