「未央……」


早苗達の元へ戻ると、あたしの表情を見た早苗は何かを感じ取ったようだった。



「そんじゃあ、全員揃ったところで場所を移すぞーー!」



重たくなった空気をかえようと、立ち上がったのは旬の友達の拓真(タクマ)くんだった。


彼は、旬とは雰囲気が全然違う。
物静かな旬とは正反対で、いつもみんなのムードメーカ的存在だ。
そして、まとめ役でもある。


だからだろうか、よく学園祭とかでは実行委員会を任されいた。



いつもニコニコしていて、どちらかと言うと勉強は出来るほうじゃないのに頭の回転は速い。


それも、みんなから一目置かれている理由でもある。
そんな彼と旬は小学校の頃からの友達で、お互い話さなくても何を考えているのがわかるらしい。


あたしと早苗も負けてないけど。





あたし達はぞろぞろと会計を済ませ、お店を後にした。
街はもう陽が傾き始めていて、高くそびえるビルに光は遮られている。

歩道を歩くあたし達の影が、長く長く伸びている。
暖房が効いていた店内から一歩でると、肌を刺すような冷気に襲われた。


「さむ~」


あたし達は口々にそう言いながら肩をすくめた。

みんなから少し距離をとって歩くあたしの顔を旬が覗き込んだ。


「……大丈夫か」

「……うん、大丈夫。 しょうがないんだよ。子供のあたしがどうあがいても……アメリカ行きは取り消せない。そしたら、会えないんだもん」

「それでいいのかよ……お前の気持ち、そんなもんなのかよ」


旬は、あたしから顔を背けると上着のポケットに手を突っ込んで少し足を速めた。


な、なによ……

だって……あたしだって……
旬の背中を見て、思わず泣き出しそうになってしまう。



でも、その時―――






「……未央さん!!」