見上げるとちょうどあたしを見下ろす旬と目が合う。
真っ直ぐあたしを見つめる旬。
あたしは、唇をキュッと結んだままコクンと頷いて見せた。
「そっか……」
そう言って、ほんの少し微笑むとまた向きなおってあたしの手を引いて歩き出した。
「……相田は? 知ってるんだろ?」
「……」
不意に旬の口から要の名前が出て、思わず言葉に詰まってしまう。
要は知ってるよ……。
知ってる。
知ってて、あたしに“しょーがい”と言ったんだ。
旬はそれ以上何も言わなかった。
ただ、繋いだ手に力を込めたのがわかった。
「着いたよ」
「……え? ちょ…ここって……」
待って?
なんで……なんで“ここ”なの!?
あたしは、まるで金縛りにでも合ってしまったかのようにその場から動けなくなってしまった。
連れてこられた場所……
それは……『cafe and ber JIJI』
「旬…………どうゆう……」
「――ほら、みんな待ってる」
動揺を隠しきれないあたしの言葉を遮って、旬は木目調の扉を開けた。



