―――ピンポーン
暫くして、玄関のチャイムが鳴った。
あたしは、鞄とマフラーを掴んで玄関を開けた。
玄関先にいたのは、早苗……じゃなかった。
「おす。 迎えに来たぞ」
そう言って、寒さで赤くなった鼻をすすったのは、旬だった。
「旬…? どうして……」
キョトンとするあたしを面白そうに眺めると、旬はあたしの手を掴んだ。
「行こう。 みんな待ってる」
「え?…どうゆう事?」
旬はあたしの質問には答えずに、ただにっこりと笑って歩き出した。
なんで?
旬……
あの日の旬の背中とダブって見えて、なんだか繋いだ手が急にぎこちなくなった。
でも、それはあたしだけのようで、旬は時々後ろを振り返りながらあたしの歩幅を気遣ってくれている。
「……未央」
「え?」
住宅街を抜けて、駅が近づいて来た頃。
それまで黙っていた旬が不意にあたしを呼んだ。
前を向いたまま立ち止まっている旬。
繋いだ手に、力が入るのがわかった。
「……ほんとに行くのか? アメリカ」



