それから、あたしは両親と一緒に相田家を後にした。



タクシーに乗り込んで、暗闇にぼんやり浮かんだおじさん達を見た。



玄関から零れる光に照らされて、おじさんもおばさんもジッとあたし達を眺めている。






こんなにあっけなく“終り”が来るなんて……。


遠い先の話のような気がしていた。



居候なんだもん。



いつかは必ず帰わなければいけない日が来ることはわかってたはずなのに。



でも、どうしてだろう………



どうしてここに要はいないの?



あの桜の木の下で交わした約束は嘘だったの?







要……要………会いたい。



最後に一度だけでいいから……



どんなに憎まれ口たたいても、その後には必ずあたしに優しくしてくれた。

あの甘いムスクの香りがする要の腕の中にはもう戻れないの?




ねえ……


また子供みたいに笑ってよ?

“しょうがないヤツ”って困った顔してあたしを抱き締めてよ?







美咲さんの事とか……


もうなんだっていい。


なにもかも忘れて……ただ…………会いたい。


声が聞きたいよ。