お互いが何も言えないまま、あたし達はそれぞれの部屋に戻っていた。


あたしは、いい加減自分の不甲斐なさにうんざりしてしまう。



美咲さんの事、要に聞いちゃえばいいのに。

もしかしたら、あたしの勘違いかもしれないじゃない。

だったら、こんな苦しいキモチから解放されて今までみたいに楽しく要を好きでいられる。


要が好きだと気づいて、やっと付き合えたのに・・・

これじゃ、今の方が要が遠いよ・・・



あたしは抱えていたクッションをギュッと抱き締めた。



ふと、時計に目をやると、時間はもう11時を回っていた。

おじさん達遅いな・・・



あたしは布団に潜り込んで体を丸めた。

こうしてるとすごく落ち着く。


人間って、お母さんの体の中にいた時の事無意識に覚えてるって聞いた。

これも、そのせいなのかな?


暗い部屋。



時計の音だけが静かな部屋に響いた。






―――コンコン





突然ドアを叩く音がしてあたしはビクリと体を起こした。


「・・・まだ起きてる?」


その声は要だった。


「・・・う、うん!」


あたしは慌てて手ぐしで髪を直し、ドアを開けた。
急に光が差してあたしは思わず目を細めた。
見えるのは、黒い要らしきシルエットだけ。


「ちょっと話あんだけど・・・入ってもいい?」


「・・・・うん」


あたしはそう言いながら、体を少しだけ反転させた。
その開いたスペースから要は先に部屋に入る。


「おじさん達遅いよね」


なんて言いながら電気を付けようとスイッチに手を伸ばした瞬間、あたしは後ろから要に抱きすくめられていた。



「・・・か、要?どうしたの?」



あたしは自分の背中から伸びる要の腕にそっと触れた。
耳元にかかる甘い吐息。

それと同時にあたしを包む、甘いムスクの香り。



ああ。


要だ・・・・。




あたしは立っていられなくなりそうで、要の腕をギュッと掴んだ。