わわわッ!
その装いは、まるでファッション雑誌からそのまま抜け出したようだった。
緑と赤、青の入ったカラフルなダウンジャケットにゆるすぎないダメージジーンズ。
帽子の好きな要らしく、今日はポンポンの付いたニット帽をかぶっている。
か、かわいい・・・・
やっぱり要はずるい。
こんな事であたしの心をあたり前のように奪っていく。
あたしがほけーっと見上げていると、要は「なに?」と小首を傾げた。
「な・・・なんでもない!なんでもない!」
そう言って、慌てて階段を降りるあたしの後ろからクスクス笑いながら「変なやつ」と言った声が聞こえた。
その言葉にさらに顔が赤くなるのを感じた。
ううぅ。
こんなんで今日、あたし大丈夫?
―――――――・・・・
―――――・・・
「この映画観たい!」
「・・・・無理」
あたしが指差したのは、べタベタの恋愛映画。
要はそれを見上げ、うんざりした顔をしている。
だって、観たいんだもん。
ほら、このキャッチコピー見てよ!
“甘い時間を過ごしたいあなたへ~”
これを観て、要と一緒にいられなかったぶんを取り戻すんだ!
興奮気味のあたしを見て、要は「はあ」と溜息をついた。
そして、クイッと口角を上げて悪戯に笑うと要はこう言った。
「なんだよ。こんなの観なくても今からホテル行く?」
「○△×□・・・!?」



