あたしだけかもしれない。 みんな、準備に大忙しだもんね。 “シアワセ” って、そんな顔をしてる。 そこから目を逸らすと、空を見上げた。 風が木々を揺らし、あたしの髪を撫でた。 どんよりと暗い雲がいつの間にか、手を伸ばせば届きそうなところまできていた。 ――……雨、かな? うんん、これだけ寒いんだし雪になるかも。 首にぐるぐる巻かれたマフラーをもう一度巻きなおした。 「あ。……ここって」 あたしの足は無意識のうちに“あの店”の前へ来ちゃってたんだ。