それからしばらく待ってみたけど、要は現れなかった。


本当にここにいるんだよね?



あたしは、にこやかに仕事をしている美咲さんをぼんやりと眺めた。


一体二人はどんな関係なんだろう。


あたしの思い過ごしなのかな。


あたしは時計に視線を落とす。


11時か……。
もう、そんな時間だったんだ。


もうすぐ要も帰ってくるだろうし、今日のところは帰らなくちゃ。


優しいお兄さんにも会えたし、美味しい飲み物も飲めたし。
収穫がなかったわけじゃないもんねっ!


美咲さんも……なんか、悪い人じゃなさそう。



あたしが鞄を引き寄せて立ち上がろうとした、その時だった。




「お客さま」




不意にお店の人に声を掛けられ、その声につられるように顔をあげた。