「ここに座ってて」
なぜか、名前も知らない男の人に…(いやいや、お店の人なんだけど)あたしは無理矢理店の中に連れてこられ、一番奥のテーブル席に通された。
あたしをソファイスに座らせると彼はカウンターの奥に消えていった。
なによ…
あたしはむぅとして、その姿の後を追った。
やっぱり昼間見る雰囲気とちょっと違うな…
お店には来たことはないけど、今はしっとりとした大人の雰囲気の落ち着いたBARだ。
客もカップルや常連さんだろう…カウンターに一人でお酒を飲む人達がいる。
あたしは、少し薄暗い店内を見渡した。
あいにく、店内に要の姿は見当たらない。
いないんだ…よかった。
胸を撫で下ろした瞬間、あたしの目にあの人の姿が映った。
思い出したかのように固まるあたしの体。
そう。
カウンターの中にいて、お客と笑い合っている人。
美咲さん、だ…。
あたしはまるでに捕まってしまったかのように、彼女から目をそらす事が出来なくなっていた。