「未央ってほんとおもしれぇ」



あたしの焦りようを見て、要は吹き出した。
下を向いたまま、肩を震わしている。



「ひ、どい……、あたし……もうわけわかんなくて……だって、要とこうしてるなんて、信じられなくて……なのに、からかうなんてひどいよぉ」


鼻の奥がツンと痛い。
やば、本当に泣いちゃいそう。


「……未央」


あたしの名前を呟いた要は、もう笑ってなんかなかった。

スッと伸びてくるその手を思わずよける。

それでも、要はあたしの耳の後ろから髪をすくい、そのままグッと自分のほうへ引き寄せた。


「ごめん。……未央が必死になる姿がかわいくて。それが俺のせいだって思うともっとその顔が見たくて……マジでごめんな? 俺……重症だわ」

「……」


消えちゃいそうな、かすれた声で囁く要。


ドクンって全身の血液が一気に押し出されていく。


「はぁー」って大袈裟な程の息をついた要は、最後にもう1度ギュッと腕に力を込めてから、あたしを解放した。



「以後、気をつけます」

「……あ、はい」



目を閉じて、まるで誓いをたてるみたいに右手を上げた要に思わず頬が緩んだ。



「あ」



何かに気づいたように、ハッとその瞳を開けた要はあたしの顔をジッと見た。



「ちなみに未央にとって俺がは“初の彼氏”になんの?」

「え? う、うん」



そっか。


彼氏……か。
なんだかその単語、くすぐったい。



「じゃ、オレが初めて貰うわけだ。未央のバージン」

「へ?」



思わず顔を上げると、ニンマリ笑う要がいた。


さ……さ……最低―――!!!