髪にキスなんて……エロいやつ。
そんなの、されたらどうしていいかわかんなくなる。
捕まったみたいな感覚になるじゃん。
もう、これ以上抵抗しても無駄って、そう思えてしまう。
ドクン ドクン
口付けたまま、あたしの顔を覗き込んだ要と、一瞬視線が絡み合う。
わわわっ!
ギョッとして顔を背けたその時、楽しそうに唇を持ち上げた要。
「俺、未央の髪好きだなー」
「へ?」
そう言って「にゃはは」と笑うとクシャクシャと髪を撫でた。
「なな、なんで?」
髪が好きなんて言われた事がない。
ネコっ毛の癖っ毛で、胸まである髪もあちこちに跳ねてしまってる。
あたしのコンプレックスのひとつ。
「ピョンピョン跳ねてて、なんか、目が離せない」
そう言うと上に束ねてある髪をクイッと引っ張った。
「いたっ ちょっとーもぉ、やめてよ……」
引っ張られた髪も、実はちっとも痛くない。
だけど一言言ってやりたくて、文句を言いかけたあたし。
だけど、いつの間にか要の腕の中。
本当に自然な力で、抱き寄せられた。
それは強引なんかじゃんくて、優しくて、ドキドキした。
キュッと腕に力を込めて、あたしを抱きすくめる要。
そして耳元でそっと囁く。
「あーーなんだよ……なんかすっげぇー幸せ」
微かに触れた唇。
かすれた低い声。
あたし、泣いちゃいそうだよ。



