竜の箱庭

その答えに、シィは思わず顔面から血の気が引いた。
そんな結末は、あんまりではないか。
何のためにネリーがあんな酷い目に合い、ルード達が犠牲になったのか。
自分がここまで来た意味は…いろいろな考えが一瞬で脳内を駆け巡り、思わずシィは立ち上がっていた。

「あの!」

シィが声をあげると、竜たちの笑い声が止んだ。

「私…エルシアと言います。サドラルは言いました、私は来訪者ではないと。私の…選ばなくてはいけないことってなんですか?私は何をすればいいの…あの方ってなんですか…教えて」

一気に捲し立てると、竜たちの小さな溜息が聞こえた。
ややあって、何もない空間にちょこんと二人の子供が現れた。

一方は白髪に金色の目、一方は漆黒の髪に青い瞳。
ハリエストと、デルスト。


「…確かに、エルシア。お前は来訪者ではない。だが一方で、そうだとも言える」

白髪の竜-…ハリエストが言った。

「来訪者とは、即ち我ら竜の力や記憶の欠片だ。永き時を生きるには、相応の代償も必要とする」

黒髪の竜-…デルストが言った。

「お前の背にもあるはずだ、刻まれし刻印が。だが、来訪者とは我らの器であり、備える力もあくまで欠片」

「愚かなニンゲンどもが我らの欠片を扱い、我らそのものの力を扱えている気になっているようだが、それもまた小さきものたちの考えることよ」

竜たちは溜息をつくと、エルシアの手を取った。

「だが、お前は違う」

「お前は特別なのだ」